医療関係者の方々にお世話になるとき、呼び掛け方がわからないという人が時々混じってきます。医師を先生と呼ぶのはいたって普通であり、一般的にも先生以外の呼び方をした場合のほうが違和感があるくらいです。看護師なら看護師さんという呼びかけが一般的ですが、呼び方にもっとも困るのが薬剤師なのではないでしょうか。
実のところ、薬剤師同士や病院関係者、さらには薬剤の仕入れや納品でつながりのある製薬会社の人たちは、先生と呼んでいます。他に呼び方がないことや、国家資格保持者というプライドに加え、尊敬の念を表明するために最適な言葉が先生ということなのでしょう。
けれど、患者として薬の調剤をしてもらいに来た人が先生と呼びかけるのは、どうも抵抗を感じるという人が大多数なのではないかと思われます。それには、医薬分業が定着する前には患者と直接関わりあうことが少ない医療関係者だったことも、大きな理由になっていると考えられます。
それが医薬分業になり、処方箋を持って行くと薬を作ってくれ、説明をしながら手渡してくれる人になったことから、どんな風に呼びかけるべきか困ってしまったというのが、患者側の事情です。一方の薬剤師側からすると、取引のある製薬会社の人からは尊敬の念を込めた呼ばれ方をしたいでしょうし、同僚や調剤事務を受け持つスタッフからも敬意を払ってもらいたいという考え方になるでしょう。
それが結局のところ、先生としか呼びようがないという実情を生み出しているのかもしれません。